暑寒別岳

1491m
2004年6月13日 歩行時間  約8時間15分
雨竜沼ゲートパーク(5:10)→湿原入口(6:15/25)→南暑寒別岳(8:10/30)→小ピーク(9:30/40)→暑寒別岳(10:15/10:55)→鞍部(11:50/12:00)→南暑寒別岳(12:40/13:00)→湿原入口(14:15/14:30)→雨竜沼ゲートパーク(15:30)



●梅雨時の北海道の山
 本州が梅雨に入る6月、梅雨の無い北海道の山で登り残していた暑寒別岳に登る事にした。金曜日の仕事が終わってから空路札幌入りし、翌日レンタカを借りて幕営地となる南暑寒荘ゲートパークまで入る予定である。時間に余裕があったので、美瑛の丘に立ち寄りジャガイモとソフトクリームで北海道気分を味わう。旭川の郊外で買物を済ませて、滝川から登山口を目指して走っていると、雨が降り出してきた。天気予報では夜には上がるとめいう。雨上がりの翌日は景色が綺麗だろうと、楽観的に考えながら走る。

 北海道の山は登山口まで長い林道を走る事が多いが、多くの林道には入り口付近にゲートが設けられていて、山開きまではしまっている事が多い。この南暑寒荘ゲートパークへ向かう林道にも、麓の尾白利加ダム付近にゲートがあり、もし閉まっていたら増毛側の登山口まで2時間位迂回しなければならない。例年の山開きは6月中旬とガイドに有ったので゛、もしかしたら閉まっているかしらと心配しながら走っていくと、果たしてゲートは開いていた。林道終点にある南暑寒荘ゲートパークは、よく整備された野営場と南暑寒荘があり、テントは500円、小屋は1000円だった。折角テントを持参したので幕営したが、この野営地はブヨが煩く小屋泊まりが正解だろう。まだ、シーズンインして間もない時期だったからか、テントは自分の他5張ほどしかなかった。受付で料金を払うと、山開き記念のタオルを貰う。聞けば数日前の6月10日が今年の山開きだったと言う事だった。受付をしている間に雨も上がり、テントを設営、旭川で仕入れたラム肉のジンギスカンで夕食を済ませた。





●霧の中を歩く
  翌日は4時に起床しテントを撤収、朝食を済ませて5時少し過ぎに出発する。北海道の6月は日が長く、3時前から空が白み始める。今日の行程を考えると、もっと早く出発する事も出来たのだか、まあ5時に出れば大丈夫だろう。
 
 野営地から砂利道を少し歩き、鉄製の吊橋を渡ったところから登山道が始まった。雨竜沼までは歩く人も多いのであろう。道はしっかりしている。道端のシラネアオイの大輪を愛でながら沢沿いの道を進んでいく事約1時間で、傾斜が緩くなり沢の脇を歩く様になる。沢の両側が開け始め、湿原に点在する木立が霧に霞んでいて、何とも幻想的な風景の中を進んでいくと、小さな沢を渡ったところに湿原入り口の休息スペースがあった。湿原を傷めないよう、スノコ状の板の上にベンチが置かれていた。ザックを下ろし休憩だ。

広大な雨竜沼湿原


チシマザサの中を進む


南暑寒より暑寒別岳
●湿原を越えて
 雨竜沼湿原は東西4キロ、南北2キロの広大な山上湿原で、しっかりとした木道が整備されている。はじめの大きな沼の先で木道が二股に分かれているが、時計回りの一方通行になっており、左のルートへ進む事になる。所々に水芭蕉の花が咲いていたが、全体としては草が青くなっていない感じで、あと2〜3週間後が湿原としては良い時期なのだろう。

 湿原の奥で分岐した木道と合流し、階段状の坂道で湿原を抜けた。ここからは南暑寒別へのゆるやかな登りが、延々と続く事になる。道の両側は背の高いチシマザサでほとんど展望が無い道が続く。時折前方の空に雲間から青空が覗き、南暑寒らしい山が垣間見れるが、これがなかなか近ずかない。北海道の山の図体の大きさを実感しながら、ひたすら歩く。残雪がチシマザサを倒し、これを横断するようになってから暫らく登って行くと、ハイマツが現れ始め、ヒョッコリと南暑寒岳の山頂に出た。
 

南暑寒岳より雨竜沼湿原(帰路)


雨竜湿原より南暑寒別岳(帰路)


雨竜湿原より暑寒別岳(帰路)
●残雪を踏んで暑寒別へ
 南暑寒別岳の山頂で休んでいると、次第に雲が切れ始め正面に大きな暑寒別岳が現れ始めた。ここからは一旦180m程下り、300m上り返す行程だ。南暑寒の山頂からは、チシマザサの中に一本の道筋がはっきりと見て取れ、どうやら迷うことなく歩けそうだ。握飯で小腹を満たしてから、再び暑寒別を目指して歩き始める。
 
 山頂直下のガレ場を慎重に下り、笹の中では枝に掴まりながら滑らないように下っていくと、15分程度で鞍部に到達する。この辺りから登山道は残雪に覆われるようになり、残雪帯を横断してから再び登山道に復帰する入口を間違えないように慎重に進む。本州の登山道では良く残雪地帯からの入り口に赤テープが付けられているが、このコースでは特に印は無い様だ。何回目かの残雪帯では本来の登山道に復帰する入口を見落とし、残雪帯を登っていってしまった。登山道が尾根筋についていて、残雪が尾根筋近くまで伸びていたのを確認しながら歩いたので不安は余り無かったが、霧が出ていたら怖い場所だ。

 鞍部の残雪地帯を登りきり小ピークを過ぎると、暑寒別岳への最後の急登が始まる。登山ルートの左側が切れ落ちていて、ガレている斜面を慎重に進む。この辺りが今日のルートで最も急な斜面だった。一気に高度を稼ぎハイマツ帯を、根に注意しながら登っていくと、山頂下の平坦な斜面に出る。ここからひとのぼりで、漸く暑寒別岳の山頂に到着した。

残雪帯を横断する。


大輪のシラネアオイの中を進む


最後のひと登り

頂上までもう一息


暑寒別岳山頂
●はるかなり暑寒別岳
 山頂には既に大勢の登山者がいて、昼食を採っていた。聞くと皆、岩清水コースを登ってきた人で、南竜沼から登って来た登山者は誰もいなかった。(下山時に、一人だけ南暑寒荘から上って来た人とすれ違う。この日の南暑寒ルートは自分も含めて2名だった)暑寒別岳の山頂からは、まだ残雪を沢山まとっている郡別岳や浜益岳の、雄冬の山がよく見える。増毛山地と呼ばれるこの一帯は、北海道でも有数の豪雪地帯で初夏まで残雪が残っている。またこの一帯は、人を寄せ付けない奥深い山が多く、一般的な登山道は歩いてきた雨竜沼から暑寒別岳へ伸びるルートと、日本海側から山頂を目ざす箸別ルート、岩清水ルートしかない。近くの郡別岳や浜益岳には登山道が無く、南暑寒別の山頂で出会った地元の登山者によると、残雪期に山スキーで登るぐらいらしい。北海道らしい図体の尾大きな山と、未開の山岳風景を楽しむ事が出来た暑寒別岳の山頂であった。

●苦しかった帰路
 帰路は天候も良くなり、青空の下で景色を楽しみながらの歩きとなったが、鞍部から南暑寒別への登り返しが実にきつかった。結果的に南暑寒と暑寒岳の間は、行も帰りも同じぐらいの1時間35分の歩行時間を要してしまったが、帰路は青空のもとで景色を楽しみながら歩く事が出来た。南暑寒岳山頂からの景色は素晴らしかったし、行きは霧に包まれていて幻想的な姿だった湿原が、所々に点在する沼の水が青く光り、遠くに真っ白な雪をまとった暑寒別の山体を写す光景は、まるで天国の様でもあった。何時の日か、今度は紅葉の時期にでも訪ねてみたい暑寒別岳である。 

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