●薄暮の時間に登山口に到着したが...
東京の自宅を2時前に出発して、中央高速を一路松本へ。先々週に鋸岳に登った時より早い出発だ。まだ真暗な時間帯に、豊科インターを降りて白沢の登山口を目指したが、大糸線沿いには地図に無い新しい道が沢山出来ていて道に迷ってしまう。結局JRの駅まで走り、地図を見ながら登山口へ向かったが、カーナビが欲しいと思った1コマだった。
登山口には5時20頃到着、荷物をまとめていると段々明るくなってきた。出発地点の写真を撮ろうと思って、一丸レフのカメラを構えてシャッター押したらば、落ちない。あれ?、バッテリーかなと思って液晶のパネルを見るのだが、異常の表示は出ていない。オートフォーカスのレンズは動いているのだから、電池は切れていない。暫らくカメラと格闘したが、どうやらシャッターの故障の様だ。はてさて、カメラを持たずに登るか、どうするか。今日のコースタイムは結構長い。少しでも早く出たいのだけれど、やはり山頂での「証拠写真」を撮っておきたい。だいいち、「゛この゛ページに写真が載せられないではないか。」と言う事で、登山靴にスパッツまで着けた格好で車に乗り込み、近くの?コンビニまでインスタントカメラを買いに走る。何時もはコンビニがやたら目に付く国道沿いなのだけれど、こういう時に限って店が無い。漸く見つけたKマートでインスタントカメラを買い、急いで取って返した時には6時15分になっていた。長いコースタイムに備えて、薄暮の中を歩き始められる時間に来たのに、上手くいかないものである。今日の行程は、標準タイムが登り6時間30分・下り4時間。日の短くなったこの季節、帰りにはカンテラも覚悟をして歩き始める事にした。 |
餓鬼岳への登山口
桟道を進む
白沢を渡り返す
|
鎖を伝って進む
ガレた谷筋を登る
大凪山の山頂
|
●沢沿いの桟道を行く
歩き始めて暫らくは、白沢を渡り返しながら登山道は進んでいく。よく手入れされた桟道は思ったより歩きやすかったが、雨の日等はスリップに注意が必要だろう。紅葉ノ滝から魚止ノ滝の間は、所々に鎖を頼って幅の狭い足場を進むところがあり、絶壁の下を流れる沢筋を遠目に見ながら慎重に進む。魚止ノ滝では登山道は左へ巻いて滝の上に登り、滑滝の中に付けられた桟道を進んでいくが、この辺り雨で増水すると登山道が水没するのではないかと思われた。沢筋から離れれると、程なく「最終水場」の標識が立ちベンチのある小広場に出た。
最終水場からは、いよいよ尾根筋への取り付きだ。樹林帯のなかジグを切って急な斜面を登っていく。途中でトラバース気味に左へ進んでから、凹状のガレた斜面を登る様になる。この辺りから、昨夜「餓鬼岳小屋」に泊まった下山途中の登山者とすれ違いはじめた。笹が所々に出始めると、間も無く大凪山の山頂に辿りつく。魚止ノ滝から大凪山の間が、このコースでは一番きつかった。時計を見ると9時になっている。歩き始めて2時間45分、少々飛ばし気味であったが、コースタイムより45分の短縮だ。カメラの故障によるロスタイムを、ほぼ取り戻した格好だ。 |
●脹脛の違和感
大凪山からは、比較的緩やかな尾根筋をどんどん進んでいく。この辺りから紅葉が始まっていた。緑の木々の所々に、黄色や赤の紅葉が映えていて、歩いていて楽しい道だ。残念だったのが空模様で、尾根筋に出てからは霧の中を進む様になってしまった。天気予報は全国的に秋晴れだったのだが、高山帯の天気は下界とは違う様だ。尾根筋を快調に飛ばして小1時間ゆくと、「百曲り、山頂1時間」の標識が現れた。あともう少しと、ピッチを上げたのが良くなかったのか、木の根を跨いだ瞬間、脹脛に違和感を覚えた。いけない、足の攣る前兆だ。注意を向けると脹脛が硬くなっていて、無理に伸ばしたりすると、筋肉が攣りそうになっていた。 ここまで、カメラを買いに走ったロスタイムを挽回すべく、飛ばし加減で登って来た。やはり無理は良くない。ふと立止まって辺りを見渡すと、辺りは濃いガスに包まれているが、背の低くなった木々が紅葉し霧に包まれている情景は、味わい深いものがあった。「ゆっくりいこう。あと1時間なのだから。」と自分に言い聞かせて、景色を楽しみながら一歩一歩ゆっくりと歩みを進める事にした。百曲がりの標識から先は、木の根による段差などが少ない、比較的に歩きやすい道だった事も幸いして、ほぼ予定通り11時頃に小屋のある稜線に達する事が出来た。 |
紅葉の中を進む
霧に包まれる尾根筋を登る
|
山頂より燕岳への稜線
|
山頂より唐沢岳方面
|
山頂まであと僅か
|
●稜線の反対側は晴れ
餓鬼岳小屋の建つ稜線に上がると、何と青空が見え始めた。風上側にあたる稜線の西側はピーカンなのに、稜線の東側は濃いガスに覆われていると言う、対照的な天気であった。天気予報の秋晴れ基調は正しかった。小屋から山頂まではほんの僅か、五分程度しかかからない。燕岳を思わせる白砂を踏んで山頂に立つと、餓岳から燕岳に至る稜線で雲が湧いているのがハッキリ見て取れた。槍ヶ岳方面は雲に覆われていて北アルプスの山と対面する事が出来なかったが、黒部渓谷を挟んで反対側に立山が雲間から見え隠れしている。登っている最中は、日差しを遮るガスも良いが、山頂はやはり晴れているのがいい。
山頂は賑やかと言う程ではないものの、数組の登山パーティーが入替わり登ってきた。少々長めのアプローチを要する餓鬼岳は、比較的に脚力のある登山者が多い様で、日帰りで餓鬼岳を目指す人は特にその傾向が強い様に見えた。昼前の時間帯、今晩小屋で宿泊しようと言う人は未だ着いていない。静かで展望の良い頂に腰を下ろし、爽やかな秋風に吹かれる至福の一時を過ごす事が出来た餓鬼岳の山頂であった。
|
雲間に覗く立山
餓鬼岳の山頂 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|