●憧れのニペソツ山
天塩岳、ニペソツ岳、石狩岳と、大雪周辺の山々を登る2003年夏の北海道山行の中で、最も登りたかった山がニペソツ山である。独立峰でアルプスの山のように屹立した姿は、いやが上でも登りたくなる姿だ。数年前、層雲峡からトムラウシまで大雪を縦走したが、この時ヒサコ゜沼の幕営地から、ニッコウキスゲに囲まれた湖に浮かんで見えたのが、ニペソツ岳だ。その頂に今回登る。
●樹林帯を抜けて
糠平湖畔の幕営地をまだ薄暗い内に出発、十勝三股から林道に入り登山口へ向かう。例年は杉沢出合まで車で入れるのだが、大雨で林道の地盤が緩んだらしく、手前登山口の1.5キロ程手前で通行止めとなっていた。もう既に沢山の車が停まっていて、脇の枝道に漸く駐車スペースを見つける。この分だと、今日だけで数百人が入山している事だろう。装備を固めて林道を歩いていくと、15分程で林道終点の登山口に到着した。ここから十六ノ沢を渡り、長い行程の始まりだ。
登山道は暗い樹林帯を進んでいく。傾斜はきつくなく足元もしっかりしているが、しばらくは単調な登りだ。登山口から約1時間30分程すると、次第に道が平坦になり、所々視界が開けるようになってきた。小天狗を回りこみ、天狗のコルへ向かうルートだが、ここに小さな難所があった。数mの岩を回り込むだけなのだが、手の引っかかホールドが小さく、岩に腹を押し付ける様にして回り込む時、足場が心もとなかった。このコースで唯一緊張した場所であった。 |
ヒサコ゜沼に浮かぶニペソツ
登山口には沢山の車が
十六沢を越えて上り始める
ホールドの小さい岩を廻りこむ |
前天狗の肩から大雪連峰 |
登山道脇に咲くエゾフウロ |
天狗のコルから前天狗岳 |
前天狗の岩稜帯
前天狗からニペソツ山
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●前天狗でニペソツが出現
天狗のコルで一休みしてから、前天狗への登りに取り掛かる。この辺りからは、チングルマの群生地が次々と現れ目を楽しませてくれる。小振りのダケカンバをくぐる様にして次第に高度を上げていくと、所々にか薄紫色したエゾフウロが咲いていた。淡い紫色が何とも言えない。単独行の身軽さから、次々と前を行くと登山者を追い越していったが、途中で7〜8人のパーティーから声をかけられた。昨日天塩岳ですれ違った名古屋から来たと言うパーティーだった。海の日を挟んだ連休は北海道の夏山最盛期。本州からも大勢登山者が訪れるが、やはり人気の山に集中する様である。
辺りの木々がダケカンバからハイマツに変る辺りからは、所々で展望が開けだす。所々に残雪を残す大雪連峰の雄大な眺めを楽しみながら歩いていくと、登山道は前天狗のピークを右にまいて岩稜帯を進む様になる。そして岩稜帯を登り切った所で、正面にニペソツが出現した。スックと立ち上がったニペソツは見惚れる程に立派だ。登山口から延々歩いて来ないとこの姿は拝めないが、此処からニペを拝むだけでも来る価値があると思った。 |
天狗岳をまいてニペを目指す |
●ニペ山頂を目指して
前天狗からはガレ坂を一旦下り、天狗岳の肩に登り返す。ここから天狗岳をまいて、ニペのコルへ下り、再び上り返すと言う、結構アルバイトの多い行程だ。進むに従いニペが頭上に覆いかぶさって来る様になり、いよいよ最後の登りに取り掛かる。 |
山頂への最後の登り |
山頂より天狗・天狗平・前天狗 |
コルから標高差300mを一気に詰めていく、ハイマツ帯は何時しか岩稜帯となり、きり立ったニペ山頂部の岩稜を右に巻いて、雄大な大雪連峰を眺めながら登っていくと、漸くニペソツの山頂に辿りついた。歩き始めて約4時間半。結構な長丁場であったが、頂上からの大展望で疲れは一気に吹き飛んだ。 |
ニペソツ山の山頂 |
正面には大雪の主稜線が横たわっている。右から主峰旭岳、忠別岳、トムラウシ、茶色のオプタテシケ、噴煙を上げる十勝岳、そして富良野岳。遠くには、夕張・芦別の山塊も見えている。振返ると雲海の彼方には日高山脈。東を見れば雄阿寒・雌阿寒、斜里岳、そして雲の間から知床の山並みも覗いている。久しぶりの大展望にただただ感激する。何時まで見ていても見飽きない山景色だ。北海道の広さを実感した、何時までも佇んでいたいニペソツ岳の山頂であった。 |
大雪の主稜線 |
雄大な大雪連峰 |
雲間に浮かぶ日高山脈 |
阿寒・斜里・知床方面 |
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