●尾瀬の景鶴山
尾瀬ヶ原の北側一帯は、植生の保護の為に入山禁止となっている山域である。かつては東電小屋から笹山、与作岳を経由して景鶴山へ至る登山道があったそうだが、現在は廃道となっており、景鶴山へは雪が植物を覆い隠している残雪期に、尾根筋を辿って登るのが唯一の方法である様だ。残雪の稜線を辿って、景鶴山から平ヶ岳方面へ縦走するルートも有るのだが、日程の関係からヨッピ橋から尾根筋を辿って景鶴山を往復して来る事にした。
景鶴山へは、ヨッピ橋からケイズル沢沿いに登るルートも考えられたが、雪崩の危険と、沢への転落の危険から尾根筋を辿ることにした。我々が登った前日に、ヨッピ沢を詰めて登ろうとしたパーティーが滑落し、沢筋の雪面に開いている穴から雪の下を流れる沢に転落、我々が登っている時も捜索のヘリが飛びまわっていた。 |
1日2500円の鳩待峠駐車場
山ノ鼻を目指す
至仏山が正面にある幕営地
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●鳩待峠から山ノ鼻幕営地へ
埼玉・東京からの5名と、新潟から来たS氏御夫妻の計7名パーティーで、尾瀬の景鶴山を目指す事にした。関越道沼田インター出口に9時に集合、沼田市内で買物を済ませた後、車で鳩待峠まで入る事にする。尾瀬戸倉から鳩待峠に向かう林道は、夏山シーズン一般車両通行禁止となっているが、五月連休の時期には峠まで車で入ることが出来る。峠の手前から、林道沿いに縦列駐車が延々と続いていたが、峠まで上がってみると、丁度下山して来た車が出た処の様で、駐車場に車を入れることが出来た。駐車料金は1日2500円、延泊料を含めて計3500円であったが、重い荷物を背負って林道を延々と歩くことを考えれば安いものである。峠の小屋で使える1000円の買い物券も付いていたが、2日目の下山が遅くなり結局利用出来なかった。
峠から幕営地の山ノ鼻へは、緩やかな下り坂が続いている。所々で木道が露出していたが、緩い雪面が続く登山道は、軽アイゼンで充分歩ける。鳩待峠から山の鼻までは迄は、観光客と思われる軽装の入山者や、モノスキーやボードを担いだ人達が多く、賑やかな道が続いていた。峠から約1時間で幕営地の山ノ鼻に到着、早速テントを設営する。山ノ鼻幕営地は、小屋も開いていて売店が利用出来る他、暖房・夜間照明付きの公衆トイレ、飲料水を汲める炊事場が利用する事が出来る快適な幕営地であった。此処より先の竜宮十字路が幕営禁止である事もあって、この日も100張近い一大テント村が広がっていた。
目の前に「たおやか」な至仏山、背後の白樺の向こうにはピラミダルな燧ヶ岳が望める素晴らしい幕営地で、テントを設営後はお楽しみの宴会タイム。ベーコンと茸の炒め物、銀杏、フキノトウの煮付、ハタハタ、エビしんじょうのスープ...多彩な肴を戴きながら飲む酒の味は格別のものが有った。 |
幕営地を後に出発、背後は至仏山 |
●尾瀬ヶ原を横切りヨッピ橋へ
2日目は4時30分に起床、うどんの朝食を済ませた後、5時50分に歩き始めた。良く締まった雪面はアイゼンが良く利く。雪面の所々には湿原が顔を出し始めていて、沢を渡る地点等では木道も露出していた。踏跡が良く残っていたが、川を横断する木道の場所等、ガスが出た日等は注意が必要だろう。 |
朝霧の尾瀬ヶ原を進む、正面は燧岳 |
山ノ鼻から約30分で牛首分岐点に到着、此処で竜宮十字路への道と別れてヨッピ橋・東電小屋方面を目指す。尾瀬ヶ原の北側を東西に流れているのがヨッピ川で、川の渡河点に架かっているのがヨッピ橋である。鋼鉄製の丈夫な吊橋であるが、降雪期には踏板が外されていて、下に川面が見える鉄骨を辿って渡るので少々緊張するが、橋の高さは低く距離も短い橋で、予想した程の怖さは無かった。 |
踏板の外されたヨッピ橋を渡る |
景鶴山が見えて来た
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笹山から与作岳を目指す
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東電小屋の手前で尾根にとり付く
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与作岳から見た景鶴山
空身で急斜面を登る
岩場の手前では行列が..
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●与作岳から景鶴山へ
ヨッピ橋から10分程度で尾根筋への取り付きとなった。東電小屋から笹山を越えていくルートもあるが、ヨッピ橋側からだと笹山の西南斜面から笹山と与作岳を結ぶ稜線上の鞍部に突き上げた方がアルバイトが少ない。稜線上に上がってからは踏み跡もしっかりしていて、所々に記された赤テープで道を確認しながらの登りとなった。笹山から与作を越えて景鶴へ至るルートは、この時期良く歩かれていて、我々が登った日も、郡山から来たと言う20名位のツアー、10名位の大学&高校の山岳部の他、何組もの登山者が入山していた。
笹山から与作岳へは、カラマツ林の中の斜面を気持良く登っていける。30分ぐらい毎に鞍部が現れ、一息入れながら登ること約2時間、与作岳に辿りついた。広々とした山頂部からは、景鶴山から平ヶ岳へ至る稜線、、会津駒ケ岳等の会津の山並みが一望できる。与作岳から景鶴岳へは、一旦80m位下ってから景鶴の山頂へ突き上げるのであるが、景鶴山の山頂が狭く、途中の稜線が歩き難い事から、標高1905mの平坦地にザックを置いて、空身で山頂を往復して来る事にした。
山頂部へは急な雪面を登るのであるが、難関はその先の小岩場で、残雪の量によっては段差の高い岩を乗り越えなければならない。この日は高校・大学の懇請パーティーがザイルを張ってくれており、我々もこれを利用させてもらったが、此処では順番待ちの行列が出来ていた。岩場の先は雪の落ちかけた狭い稜線を踏んでいく。少し前に雪崩が発生したと思われる箇所もあり、慎重にルートを選びながら進んでいくと、漸く景鶴山の山頂に到着する事が出来た。 |
ザイルの助けを借りて岩を越える
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狭い山頂直下の稜線
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景鶴山山頂
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山頂で記念撮影の後、ザックをデポした1905m地点まで戻ってから、ビールで登頂を乾杯。汗をかいた体に、ビールが心地よく流れ込んでいった。パンとスープで小腹を満たしてから、登路を引き返して下山したが、残雪の斜面は下る速さが早くなる。いきよい先頭と後尾の距離が離れがちになるが、ヨッピ橋に下る最後の斜面で、最後尾と逸れてしまった。晴れていて視界が利いた事もあって少々油断してしまった様だ。橋の手前で全員合流して事無きを得たが、パーティーの先頭と後尾は視認出来る範囲にする基本が、特に残雪期の山では必要で在る事を認識させられた景鶴山であった。 |
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