●深南部の主峰「黒法師岳」
南アルプスの「光岳」より南側の山域は、「深南部」或いは「安部奥」等と呼ばれていて、登山道が少ない「山深い」領域が広がっている。その深南部にあって、大無限と並んで深南部の主峰とも言える「黒法師岳」に、水窪側から等高尾根を経由して登る事にした。「黒法師岳」は、2000年2月に一度挑戦したが、この時は等高尾根から主稜線に登りつめたものの、深雪に阻まれて山頂を目の前にして撤退を余儀なくされた。今回は、雪が降り積もる前での再度の挑戦であった。
中央高速の駒ケ岳SAに9時過ぎに集合した後、飯田ICで高速を下り、市内で食料品の調達を済ます。矢筈トンネルで上村に出てから峠を幾つか越えて、水窪湖の奥にある「戸中川林道ゲート」に到着したときには14時近くになっていた。さすがに南アルプス南部は遠い。装備を分担して戸中川に沿って進む林道を歩き始めた。林道には0.5キロ毎に標識が立っているので、現在位置が判りやすい。6キロポストで分岐する日陰沢林道を過ぎた所に「黒帽子岳・丸盆岳登山口」の標識が立っていた。以前の登山口は、日陰沢林道を30分程進んだところに付いていたが、日陰沢林道の崩落が進み、登山口が付け変わっていた。登山口付近では水場がない為、さらに500m程林道を進み、葵沢を越えた所にある水場の近くで幕営する事にする。近くには造林小屋もあり、食事の際には間借りさせてもらった。夜、小雪がちらつく。 |
紅葉の戸谷川林道
付け変わった登山口
等高線尾根を登る
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二番目の鞍部付近の笹薮
急斜面を登る |
●等高尾根
2日目は4時に起床し、前夜の「ちゃんこ鍋」をうどん仕立にして朝食をとる。5時を回っても明るくならず、11月を実感した。ようやくヘッドランプ無しでも歩けるようになった6時少し前に軽装で出発、林道を登山口まで戻って、付け換わった登山道を登り始める。比較的視界の開けた斜面を一気に登ると、あっと言う間に林道が真下に見える様になった。歩き始めて30分程で、日陰沢林道から上ってきた旧登山道と合流し、再び急坂の連続となる。等高尾根までには、1250m付近、1580m付近、1780m付近と、ほぼ等間隔で三箇所の鞍部が現れる。降雪期に登った際には、深雪の付いた斜面が登りにくく鞍部に付くとホットして休んだ事を思い出す。この時には主稜線まで5時間以上かかったが、今回は足場がしっかりしていたおかげで、丸盆岳から黒法師岳に伸びる稜線まで半分程度の時間で登ることが出来た。以前は二番目の鞍部付近で、笹が登山道に覆いかぶさりルートが不明瞭な場所があったが、今は登山道の笹はしっかり刈払われており、道に迷う事はないだろう。 |
等高尾根の鞍部
主稜線から黒法師を望む
霧氷の中を登る
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●霧氷の中、山頂部へ
主領線に登りつめる頃から、小雪がちらつく様になり始める。昨夜の降雪で、主領線付近から上では木々に霧氷が付いていた。曇天ではあるものの、登るにつれて風が強くなり、とにかく寒い。歩いている内は良いのだが、体を動かすのを止めると深々と冷えてくる。丸盆岳への分岐点で手持ちのセーターを着込み寒さに備える。主稜線に出てから、しばらく視界の開けた笹原を進むと、いよいよ山頂部への登りが始まる。この辺りは特に風が強いらしく、エビノシッポが出来かかっていた。ガレた斜面を慎重に登り、再び樹木が現れ始めると、黒法師岳の山頂に到着した。
山頂は木々に囲まれていて視界は開けていないが、お陰で風が弱く、今日みたいな風の吹く日には休息場所として丁度良い。ビールを持ってあがったが、一口飲んだ後はホットウイスキー等の暖かいものが良い。インスタントの「お汁粉」が美味しかった。 |
黒法師山頂にて
慎重に下山する
×印の一等三角点
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●11月の深南部は冬山だった
山頂で40分ほど休んだ後に下山を開始する。登った頃より風が強くなり、震えながらの下降となった。防寒具は持参していたが、真冬用のオーバーミトンの手袋が欲しいくらいだ。11月初旬の山は、下界の天気が良くても時として吹雪くこともある。昨日の夜に小雪が舞って、いやな予感がしたのだが、やはり山頂部はとっても寒かった。来週からは装備を見直すことにしよう。
行きと同じ等高尾根を下山、幕営地に戻ってテントを撤収した後、再び延々と林道を戻る。3時半に車を停めたゲートに到着。上村まで戻り、すっかり冷えきった体を「かぐらの湯」で暖めてから、帰路に着いた。 |
黒法師岳は、×印の一等三角点がある事で有名な山でもある。確かに普通の一等三角点では+に刻まれた溝が黒法師では×に刻まれていた。ただ×印の三角点は黒法師だけと言う訳ではない。「一等」では無かったが、夏に訪れた易老岳の三角点も×印であった。×印は偶然間違って彫られたのではなく、意識的に×に彫る石工職人がいたのかもしれない。 |
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